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テーマ「コイン洗濯機」 ほのぼのコラム
【ファミリー劇場「心の洗濯」|完結編】
※前回のおはなしをまだ見てない方はそちらから
ベンチの前で足が止まった。
順番を抜かしてきたあの子が、泣いている。
何か声をかけようか迷ったけれど、理由も知らないのに説教みたいなことを言うのは違う気がした。
そっと自販機で買った温かい缶ココアを、彼女の隣に置いた。
驚いた顔でこちらを見る。
「さっきは、ごめんなさい」
小さな声だった。
彼女は言葉をつなげた。
「家でうまくいかなくて……ただ、早く帰りたくて。誰にも迷惑かけたくなかったんですけど」
ぽつぽつとこぼれる言葉に、俺は首を振った。
「迷惑なんて思ってないよ。誰だって、余裕がなくなるときはある。大事なのは、こうして謝れたことじゃない?」
彼女は少しだけ笑った。その顔を見て、胸のモヤモヤも溶けていく。
ランドリーでの出来事も、公園での涙も、きっと彼女にとっても俺にとっても“心を洗う時間”だったのかもしれない。
帰り道、空を見上げる。
誰かの優しさに救われる日もあれば、自分が少しだけ誰かを救える日もある。
そうやって世界は回っている。洗濯機みたいに、ぐるぐると。
今夜はきっと、ぐっすり眠れるだろう。
洗ったばかりの服みたいに、心も少しだけ軽くなったから。






